ラブラドールの子犬、どこまで検査されていれば安心?信頼できる基準を解説

はじめに ―「検査済みだから安心」は、本当にそうでしょうか?

ラブラドールの子犬を迎えるとき、「遺伝子検査は済んでいます」と説明を受けることがあります。

とても頼もしく聞こえる言葉ですが、検査されたという事実だけでは安心とは言いきれません

大切なのは、

「何の項目を、どのように検査し、どんな結果だったのか」をきちんと把握すること。

そこまで確認して、はじめて「この子の健康状態はどうか」という判断ができるようになります。

実際には、PRAやDMといったごく一部の項目だけ検査されているケースも少なくありません。

けれど、ラブラドールには他にも気をつけたい遺伝性疾患が存在します。

このページでは、

  • アメリカ(AKC)やイギリス(KC・ラブラドールクラブ)の推奨項目
  • キャリアと発症の関係性
  • 遺伝子検査だけではわからない病気(例:股関節形成不全)

といった内容を、初めての方にもわかりやすく解説しています。

「この子と、健康で長く暮らしていきたい」

そんな思いをもって子犬を探しているあなたにこそ、ぜひ知っておいてほしい内容です。

目次

KC・AKCが推奨するラブラドールのDNA検査

ラブラドールを迎えるうえで、まず押さえておきたいのが国際的に推奨されている遺伝子検査の項目です。

イギリスの Kennel Club(KC) や ラブラドール専門団体であるLabrador Breed Council(UK)では、以下の5項目の遺伝子検査を推奨しています。

また、アメリカの AKC(American Kennel Club)公式サイト では、このうちCNM(運動ニューロン脱落症)を除く4項目が推奨項目として示されています。

これらはすべて、将来的な健康リスクを避けるための“重要なチェックポイント”

繁殖の場面だけでなく、一般のご家庭で子犬を迎える際にも知っておきたい基準です。

疾患名略称内容
進行性網膜萎縮症PRA-prcd徐々に失明する目の遺伝病
運動誘発性虚脱EIC激しい運動後に脱力・虚脱。命に関わることも
鼻角化症HNPK鼻が乾燥・ひび割れを起こす。痛みや出血も
骨格異形成2型SD2足が短くなる骨格の異常。
運動ニューロン脱落症CNM筋力低下・ふらつき。EICと混同されやすい

その他の「検査してあると安心な項目」

AKC・KCの推奨項目以外にも、遺伝子検査で判別可能な疾患は複数あります。

実施されていれば安心材料になる項目として、以下も確認してみてください。

疾患名略称主な影響
変性性脊髄症DM高齢で後肢が麻痺。介護が必要になるケースも
高尿酸尿症HUU尿路結石ができやすくなる。長期的ケアが必要
薬剤多感受性MDR1一部の薬剤に中毒症状を起こすことがある
赤血球異常症MCD慢性の貧血や疲労感につながる
骨形成異常OSD骨の変形。運動制限が必要になる場合も
網膜変性症STGD若齢で視力喪失。PRAとは別の経路で進行
ナルコレプシー睡眠障害、脱力発作。まれな疾患
神経リポフスチン症CLN5など神経変性による認知症様の症状が見られることも

「キャリア」って書いてある子犬は避けるべき?

結論から言えば、キャリア=発症ではありません

遺伝子検査の結果は主に以下の3つに分類されます。

意味発症リスク
クリア遺伝子変異を持っていない発症しない
キャリア片方変異発症しない(保因者)※
アフェクテッド両方変異発症する可能性が高い

キャリア同士を繁殖させると、子犬の25%がアフェクテッド(発症)となるリスクがあります。

だからこそ、「キャリア=NG」ではなく、「その組み合わせと説明責任」が大切

キャリアの子犬を避ける必要はありませんが、その背景をしっかり説明できるブリーダーかどうかが信頼のポイントになります。


※ただし、MDR1だけは例外的に“キャリアでも症状出る可能性あり


遺伝子検査では分からないもの ― 股関節形成不全

股関節形成不全(CHD)は、DNA検査だけでは判断できない典型的な例です。

これは、複数の遺伝子と環境要因が関与する多因子性疾患だからです。

そのため、ブリーダーはレントゲン検査を行い、骨格の適合性(表現型)を確認した上で繁殖可否を判断します。

また、滑りやすい床や段差の多い環境など、子犬期の育て方も発症に影響を及ぼすため注意が必要です。

➡ 詳しくはこちら:ラブラドールと股関節形成不全|遺伝・環境・予防のすべては?


まとめ ―「何を検査し、どうでしたか?」と聞けるあなたに

最後に、信頼できるブリーダーかどうかを判断するための3つの視点を挙げます

  1. 開示姿勢:検査項目や結果を開示してくれるか
  2. 説明力:初心者にもわかる言葉で解説してくれるか
  3. 多角的評価:DNA検査に加えて、骨格や生活環境にも配慮しているか

それが、健康なラブラドールとの幸せな暮らしの第一歩です。

シリアスブリーダーは、その問いにきちんと答える準備ができています。


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この記事を書いた人

ラブラドール専門の小さな犬舎「Melocoton Kennel」を運営しているブリーダー足立友理です。健全性や気質を大切に、数年単位で繁殖計画を立てながら、犬たちと穏やかに暮らしています。
ブログでは、ブリーダーとしての日々の気づきや、ラブラドールと暮らすうえで大切にしていることを綴っています。

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