ふわふわの毛に、つぶらな瞳。
初めて子犬を迎えた日、その姿はまさに「天使」です。
ですが——その可愛さに油断した飼い主を待ち受けているのは、予想を超えた日常かもしれません。
「家具を噛まれた」「トイレの失敗が止まらない」「手に甘噛みが止まらない」……。
そんな声は、決して珍しくありません。むしろ、子犬期に通る“あるある”の道でもあるのです。
では、なぜそうなってしまうのか。
そして、どうすれば犬も人も安心して過ごせるのか。
ラブラドールという犬種の特性もふまえながら、考えてみましょう。

この愛らしさに油断して迎えてみると…
実は「天使か悪魔か⁉︎」な日々の始まりかもしれません。
どうしてそんなに大変なの?
室内フリーは、子犬にとって危険だらけの遊園地
まだ脳も身体も発達途上の子犬にとって、家の中は刺激のかたまりです。
電気コード、スリッパ、壁紙、ソファの角、ぬいぐるみ、家具の脚…。
すべてが「触りたい」「噛みたい」「食べたい」対象です。
それを自由に歩き回らせてしまう=誤飲・破壊・事故のリスクを常に与えている状態。
子犬にとっては「探検」のつもりでも、飼い主にとっては悲鳴の連続になります。
排泄の失敗は「子犬のせい」じゃない
もうひとつ多い悩みが、トイレトレーニングの失敗です。
でも、これも多くは人間側の環境設定ミス。
子犬の膀胱はまだ未発達。
生後2〜3ヶ月では1〜2時間ごとの排泄が普通で、
4時間を超える留守番は排泄事故の確率が高くなります。
それでも「うちの子はトイレを覚えない」と誤解し、叱ってしまう人も。
でも本当は、トイレを失敗する“環境”に置いているのは人間の方なんです。
「昼間は家に誰もいないけど大丈夫ですか?」というお問い合わせをいただくことがあります。
正直にお伝えすると、人がまったくいない環境で子犬を育てるのは、現実的ではありません。
ラブラドールのような大型犬の子犬期には、目が届く時間と、育てるための体力・気力の余裕が欠かせません。
誰かが在宅して様子を見てあげられる環境、短時間でも休憩を取りながら寄り添える時間。
それらがあることで、子犬は心身ともに健やかに育っていくのです。
「天使期」を支える環境設計
最低限必要なのは「90×180cm」の安全スペース
子犬期にもっとも大切なのは、きちんと管理できる空間を用意することです。
理想は、以下のような構成:
- 丈夫で飛び出せないサークル(最低90cm×180cm)
- 中に「クレート(寝床)」と「トイレ」を設置
- 食器や給水器はクレートの近くに
このスペースを生活の基本とすることで、「誤飲・誤食」「排泄の失敗」「破壊行動」など多くのトラブルを未然に防ぐことができます。
リアルな話:ドア壊されたうちの木製サークル

ちなみにうちでは、「おしゃれな木製サークル」を選んでしまい、ドアを壊されました(笑)。
最初の子たちは問題なく使えていたのですが、ニーナとノアは同胎のラブラドール。
2頭でテンションが上がると破壊力も倍増で、さすがにドア部分が持ちませんでした。
今ではチェーンで補強し現役続行中。
サークル選びは、「可愛さ」よりも耐久性と安全性を重視したいところ。
木製はインテリアになじみますが、大型犬にとっては“かじる”誘惑の塊。
金属製のサークルをオススメします。
「壊したら困る」ではなく、「壊されない前提」で選んでおくと安心です。
クレートは「かわいそう」ではない
同じ環境でも成長はそれぞれ

おもちゃで遊ぶのも、寛ぐのもクレートです
ちなみに、同胎のノアとニーナでも、成長のペースには違いがあります。
ノアは生後8か月ぐらいで家の中でトイレをしなくなり、クレートを“自分の場所”として自然に使うようになりました。
大切なのは、「月齢」や「理想」にこだわりすぎず、ひとりひとりの個性に合わせて見守ること。
クレートやサークルが安心できる空間になれば、犬自身が自分のペースで整っていきます。
ノアにとってクレートは、完全に“安心の巣”。
嫌いな目薬を見ても、大好きなガムをもらっても自分からクレートに駆け込みます(笑)
「クレートに入れるなんて、閉じ込めてるみたいでかわいそう」と思う方もいるかもしれません。
でもそれは、人間の価値観に過ぎません。
犬にとってクレートは、「落ち着ける巣穴」であり、「安心して休める場所」。
適切なクレートトレーニングをすれば、むしろ自分から入って寝るようになります。
クレートがあれば、来客時や外出時、災害時にもストレスを最小限にできます。
排泄リズムの管理にも役立ち、トイレトレーニングもスムーズに。
その行動、“悪魔”じゃなくて“普通”です
噛む・壊す=正常な発達段階
子犬がなんでも噛むのは、歯の生え変わりでムズムズしているからでもあり、世界を「口」で確認しているからでもあります。
つまり「なんでも噛む」は、叱るべき“問題行動”ではなく、育ちゆく過程で必要な行動なのです。
だからこそ、噛んでいいおもちゃと噛んではいけないものを「区別できる環境」を整えてあげることが大切です。
飼い主が疲弊しないためにも
可愛いからといって自由にさせすぎた結果、
- ソファを破壊
- 壁紙を剥がす
- 食べてはいけないものを誤飲し緊急手術
……というケースは、実際によくある話です。
飼い主の心も、犬の体も守るために、最初の数ヶ月がとても大切です。
子犬期を「可愛いまま」で終わらせるために
ラブラドールは成犬になると、頼れるパートナーになってくれます。
でもその未来は、子犬期にどう過ごしたかで大きく左右されます。
犬も人も幸せに過ごすなら――
可愛いのに「大変だった」と感じる子犬期。
でもそれは、「育てる準備」が整っていなかっただけかもしれません。
クレートとサークルという、たったふたつの環境づくりで、
あなたも子犬も、もっと幸せな日々を過ごせるようになります。
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