「ちゃんとしたブリーダーから迎えてください」
――そんな言葉を耳にしたことがある方は多いかもしれません。
ですが、実際には「何をもって“ちゃんとしている”と言えるのか」、説明できる人は少ないのではないでしょうか。
じつはこの“ブリーダー”という言葉そのものが、日本ではとてもあいまいなのです。
ブリーダーという言葉のあいまいさ
日本では、犬の繁殖に関わる人であれば、誰でも“ブリーダー”と呼ばれてしまいます。
たとえば――
✔ 子犬を大量に生産して全国のペットショップに卸している繁殖業者(パピーミル)
✔ 繁殖に必要な知識や遺伝的検査もないまま、趣味感覚で子犬を産ませている個人(バックヤードブリーダー)
こういった人たちも、世間からは等しく「ブリーダー」と呼ばれてしまうのが現状です。
そのなかに、犬種の将来を見据え、真剣に健全な繁殖に取り組んでいる“シリアスブリーダー”が混在している――そんな歪な状況があります。
本来、ブリーダーは“犬種の番人”であるべき
私たちが考えるブリーダーの本来の姿は、「犬種の番人」。
ただ子犬を産ませるだけでなく、
その犬種らしさを大切に守り、
心身ともに健全で、豊かな気質を持つ個体を次の世代へつないでいく――
それがブリーダーに課せられた、本当の責任だと考えています。
遺伝性疾患のリスクを下げるために、必要な検査を行い、
犬種標準(スタンダード)に基づいた評価と改善を積み重ねる。
命を扱う以上、「可愛いから」や「うちの子にも子どもを」だけでは済まされない。
それが、繁殖という行為の重さなのです。
ドッグショーに出ている=ちゃんとしている、ではないけれど
私たちMelocoton Kennelでは、ブリーダーとしての責任の一つとして、ドッグショーに出陳しています。
これは、「うちの犬がどれだけ可愛いか」を競う場ではありません。
犬種標準にどれだけ近い個体かを、専門家の目で評価してもらう機会です。
ただし、ショーに出ているからといって、それだけで素晴らしいブリーダーとは限りません。
それはあくまで、最低限の姿勢の一つにすぎません。
現実には、ドッグショーに一度も出たことのない両親犬から生まれた子犬が、日本では多数派です。
そのことを思えば、たとえ評価が伴っていなくても、ショーに出ているという事実自体が、少なくとも「犬種と向き合う姿勢」を示しているとも言えるのかもしれません。
子犬が“陳列”されていることの異常さ
「でも、アメリカでもペットショップで売ってるよね?」
そんな声を聞いたことがあります。
たしかに一部では、いまだに子犬を店頭に並べて販売している例も存在します。
たとえばPetlandなどの大型チェーンが、その代表格です。
ですが、アメリカ全体としてはむしろ真逆の流れです。
カリフォルニア州やニューヨーク州をはじめ、多くの州や自治体で、ペットショップでの犬猫販売を法律で禁止する動きが加速しています。
背景には、「パピーミル」と呼ばれる劣悪な繁殖業者の存在、そして動物福祉の観点があります。
現在アメリカでは、
✅ ブリーダーからの直接譲渡
✅ 保護団体を通じた譲渡
が一般的であり、「子犬をショーウィンドウで選ぶ」という光景は、動物愛護の意識が低い場所に限定されつつあるのが実情です。
つまり「アメリカでも売ってる」は正確な情報ではなく、むしろ批判されている側の話であることを知っていただきたいと思います。
子犬を迎える前に「なぜその犬舎か」を考えて
可愛い子犬を目にして、つい「この子にしよう」と心が動く――
その気持ち、わかります。
でも、ぜひ一度立ち止まって考えてみてください。
その犬舎は、どんな犬を目指して繁殖しているのか。
親犬にはどんな検査や管理を行っているのか。
犬たちはどんな環境で暮らしているのか。
ブリーダーはどんな信念をもって、命と向き合っているのか。
そうしたことを知ることは、子犬の未来を守ることにもつながります。
Melocoton Kennelとしての取り組み
私たちMelocoton Kennelもまた、ラブラドールという犬種の健全性と魅力を、次の世代につないでいきたいと願っています。
ただ“繁殖する”のではなく、
ただ“売る”のではなく、
犬も人も、幸せになれるような出会いのために。
「ちゃんとしたブリーダー」という言葉が、単なるキャッチコピーではなく、
本当の意味で信頼される言葉になるように――
そんな思いで、日々の繁殖と育成に取り組んでいます。
コメント